夏と花火と私の死体
作者のレビュー作、当時16歳ときく。死体の一人称は実に斬新、そしてそれが十分と生かされていると思う。しかし、オチは理解し難い。
収録作に【優子】がある。読者の考えを軽々と裏切るオチは私としては表題作よりは理解し易く良いものだった。それにしても、面白いものを書く作者だ。
野ブタ。をプロデュース
一人称の語り口には思わず笑いが漏れる程。感動や共感を覚えさせることを目的としていないと思われるので、ちょっとした気分転換感覚で手に取るくらいが良いかもしれない。情景描写などは殆ど省かれ、起承転結も薄く、オチも納得し難いため、賛否の分かれる作品かも知れない。
失踪HOLIDAY
作者にしては珍しく、全体的に平坦とした優しい雰囲気で話は進む。【ほのぼの】といった表現が的確かも知れない。
私的には収録作【しあわせは子猫のかたち】に作者らしさが出ていると考える。やり切れない、しかしあたたかな切なさをこうも巧みに表現できる作家はそうはいないのではないのだろうか。